82年制作、ルチオ・フルチ監督によるオカルトホラー。
「ローズマリーの赤ちゃん」を想起させるタイトルですがどっちかと言うと「エクソシスト」をトレースした内容に思われました。
位置付け的には絶頂期を過ぎてパワーダウンしてきた頃の作品だけど、うーん確かにビミョー…
マンハッタンって言うとるのにストーリーはエジプトから開始。
考古学者のジョージは妻・エミリーと娘・スージーを連れて発掘調査に勤しんでいました。
このエジプトロケのせいで予算がとられ後半やりたいことが出来なかったそうですが、誰もいないピラミッド内部は異世界感があってかなりいい雰囲気。
1人はぐれたスージーは突然現れた盲目の老女から謎のペンダントを渡されます。
↑これが幻の千年アイテム!!
その後マンハッタンに帰った一家は1人お留守番していた幼い息子・トミーとも合流、日常に戻りますが謎のペンダントに魅入られいくスージー。
日に日にやつれていき、さらに一家の周りの人々が死亡・行方不明となっていきます。
なんとスージーの拾ったペンダントは5000年前エジプトに存在していたという邪神ハプヌブノアの物で地獄へと続く時空の門を開ける力があるらしい…
またコレ系かい、というお馴染みの内容(笑)。
冒頭のエジプトロケはメリン神父がイラクで墓掘りしてたシーンと雰囲気が似てなくもないし、現代科学を信じる母親が弱っていく娘を前に「どうしてこんなことに…私たちは無力だわ」と呟くところなども「エクソシスト」をかなり意識しているように思われました。
ホンモノと違ってこちらは家族の人間ドラマは皆無、突然現れた骨董品屋の親父さんがカラス神父ポジで身代わりになってスージーを助けてくれるというストーリーも強引すぎる…
フルチなのでストーリー云々はさておき、それでもオカルトの雰囲気はそこそこ楽しめる作品にはなっていました。
犠牲者が一瞬でエジプトに転移したり、突然部屋の床が砂だらけになっていたり…となんか発想が普通の斜め上行っちゃう不可思議なオカルト現象はオモロかったです。
何より自宅の部屋の扉が地獄の門と化してしまったというファンタジー…「ガバリン」とか「ポルターガイスト」にも似てますがこういう雰囲気づくりはフルチらしく上手。
部屋の階段を上から捉えたショットは印象的でビヨンドのような「この世に存在していないどこか」感が漂っていて良かったです。
本作の音楽はファビオ・フリッツィが担当。
なんと「ビヨンド」からいくつか曲をそのまま持ってきていて使い回し。それってどーなんって思うけど、聴き覚えのある不穏なピアノの旋律は雰囲気ぴったり、やはりフルチ作品にはこの人の音楽が1番合ってます。
本作も目のアップがこれでもかと多かったですが、冒頭にて夫ジョージが発掘中に青い光をみて一時的に失明するという展開がありました。
治るのに1年かかると言われてたのがあっさり序盤で回復…途中やっていた「ぼんやりと見える視点」はコルブッチの「ミネソタ無頼」みたいで面白くこの主人公視点でサスペンス盛り上げたらどうだったんだろ…とか思ったけど、そういう映画じゃないんだよね(笑)。
ゴアシーンはかなり控えめ、唯一の見せ場は骨董品屋の親父さんが剥製に襲われるシーン。ここも既視感ありありだったけど頑張ってました。
確かに絶頂期の作品と比べると俄然物足りなく思われる作品。でも「ビヨンド」の雰囲気が好きだった人間なら観てもオッケー…そんな1本でした。