たまに訪れる大きめの本屋さんにて「映画を語る漫画」みたいな特集がされていて、そこで初めて存在を知ったのですが、ネットではかなり前から話題になっていたようです。
映画好き男子高校生4人が各々好きなモノを語る…
1巻表紙の雰囲気よろしく「これ系映画」によい意味で傾いていて、凄まじいまでのタイトルの羅列、サラッと入ってくる台詞の引用にニンマリさせられたりと、好きな人間にはたまらない作品でした。
知らない間にザ・ファイナルと銘打った3巻が夏に発売されていたようで…遅まきながら購入し全巻改めて一気読みしました。
映画好き高校生4人のキャラが濃い…!
主人公・シェリフはアクション映画好き。
4人の中で観てる本数は1番多いけど内容を忘れてることも多い(笑)。
好きな映画は「コマンドー」「ランボー2」「ブラインド・フューリー」などなど。バットマンはバートン派。
個人的にストライクゾーンが1番重なりそうなのはホラー映画好きのごんぞうですが…
「走るゾンビは好まない」など好き嫌いがハッキリしていて主張がいちいち的確で鋭い。自分みたいなフワッとしたファンとは解釈違いが多々ありそうで話し掛けるには勇気いりそうです(笑)。
ホラー以外のお気に入り作品が「ET」っていうピュアなところも〝らしい〟感じがして、好きなモノから透けてみえるキャラクター像が面白いです。
トークを1番盛り上げてくれるのは意外、にわか映画ファンのまさみ。
「最高の映画監督はノーラン」「スターウォーズは新三部作しか知らない」…大概映画好きっていったらこんな感じだよね、というライトファン。
実は1番好きなのはプリキュアというアニメオタクで、クラスのアニメ好きグループとも交流がありつつ仲良くしているのはシェリフたち…
「何が好きか」じゃなく気の合う人間を自分で選んでて大人、時にアニオタキモいと家族に迫害されながらも自分が好きなら万人に理解されなくてもいいと胸を張ってるまさみ、カッコええです。
もう1人、何ファンなのかよく分からないヒデキは1番謎めいてました。
シェリフやごんぞうの会話に難なく付いていけるくらい知識があるのにホラーだけは絶対に観ない…
ホラー嫌いでも「映画の見方は人それぞれ」と決して他人の好きなものを貶めたりしない紳士でもあります。
学校以外にも町のビデオ屋さんが登場して21世紀とは思えないノスタルジーな雰囲気が爆発。
↑客も濃すぎる(笑)
冴えない店長になぜかゾッコンのナカトミお姉さん。「トゥルーロマンス」のアラバマ(幻想)かな…
店長のおススメ作品は、「紳士協定」「ディアハンター」「野良犬」「カッコーの巣の上で」…
きっと真面目ないい男なんでしょう。
平和な漫画かと思いきや作品には主人公たちの最大の宿敵!?村山というキャラクターが登場します。
テーマやメッセージ性のない作品はダメだとボンクラ映画の存在を真っ向から否定、唯一認めるのは黒澤明とキューブリック。
人の好きな作品を悉く否定する悪鬼のような男…
村山くんもすごい映画好きで詳しいんだろうけどインテリシネフィルっていうか観てる映画自分とは5%も被らなそう…近くにいても怖くて話しかけられないっす。
作品をどう批評するかは自由というのはその通りだと思うし、スピルバーグ批判のところはなんか分かるわーと、余りの言いたい放題に拍手を送りたくなりました。
「シンドラーのリスト」と「プライベートライアン」と「ニューシネマパラダイス」、自分も好きじゃないなあ(笑)。
観てない映画まで「観なくてもクソ」とボロカスに言い出すあたり悪役極まってますが、自分も一方的に偏見めいたものもって避けてるジャンルとか作品っていっぱいあると思う。
最近の映画って質落ちてない!?とか碌に観もせずに思ってたりするの村山くんと一緒だよなーとすごい共感できるキャラでもありました。
そんな村山くんの最終巻の姿にはビックリ。
まったくのゼロからモノを創作する仕事って自分もしたことがないけど、本当にめちゃくちゃ大変なんですね…
プロの仕事じゃない趣味でやってる同人誌とかでも1人で全部こなして1つのものを形にするって物凄い労力とエネルギーだと思う。
そして人から評価を受けることの厳しさ、これも創作者は1人で全てを背負わなくてはならない。
自分でモノをつくる視点に立ってみてはじめてこれまでと違った映画の見方をするようになる(=作品のいいところを探すようになる)村山くん。
この漫画毎回各話のタイトルが最終ページにインサートされるつくりになっていてそのタイトルが秀逸、まるで映画のエンドロール見送ったような気持ちになる神回が何回かありましたが、村山くん回も神回。
最終話はめちゃくちゃいい顔しててしかもツンデレかよ!!と胸がときめいてしまいました。
クラスのミーハーなファンが「パイレーツ・オブ・カリビアン」に湧いててなんか面白くない主人公勢、めっちゃ分かる。
小さい頃から親の影響で洋画ばっか観てて同級生と好きなものを思う存分語れないステイシーちゃん、めっちゃ分かる。
非リア充のオタクの拗らせ感情みたいなの自分もこんな学生時代だったわーってすごい共感してしまいました。
趣味も気も合う人って出会えたらラッキーだけどそんな出会いはなかなかないんだよね…でもシェリフたち4人もまさみをはじめ皆実は趣向が違ってるけどお互い尊重して布教しあってたり、好きが一致してるわけじゃない他のクラスメイトともちゃんと交流して認めてたり…皆落ち着いてて優しいなーと思いました。
映画に限らず好きなものをもってるっていうのは皆一緒だったりして場所を選んで表に出さない人も多いのかなと大人になると思います。
「コナンみるとガンダムがみたくなる」…イケメンハンター・プッチちゃんも大いに共感させられる好きなキャラでした。
きっかけはなんでも良くて、思いもよらない作品に出会えた時の喜びとか、繋げて別の作品を追いかける楽しさとかそういうのが伝わってきました。
分からない元ネタはたくさんあって特にガルパンの回は何やってるのかさっぱりだった(笑)。けど主人公の戦車映画解説が楽しくて熱量と勢いで笑って読めてしまいました。
最終話は洋画離れへの懸念など寂寞感も感じられましたが、最高のタイトルで締めくくられていて〝逆襲〟が待ってたりしないかな…期待してしまいます。
尖ったサブカル漫画と思いきや意外、好きなモノ・好きな映画があるって幸せだなーとすごく爽やかな気持ちになる作品でした。