「2001年宇宙の旅」などの特撮を手掛けていたダグラス・トランブルが先日亡くなられたとのこと。
タイトルはよく聞くものの未見だった監督作「サイレント・ランニング」を観てみました。
地球が汚染され僅かに残された木々や緑が宇宙船に詰め込まれて育てられている未来。
植物学者・ローウェルは甲斐甲斐しくドームで動植物の世話をしてしましたが、他の3人のクルーは自然を邪険に扱いローウェルのことは変人扱い。
そんな中政府からドームを爆破して地球に帰還するように命令が出ます。
緑を愛するローウェルは激怒し他のクルーを手にかけて1人宇宙空間を彷徨うことに…
エコロジーを訴えた70年代らしい内省的な内容ですが、エコを訴える主人公が人を殺すという結構ショッキングなストーリー。
いざ1人になると仲間といた日々を心に思い浮かべるローウェル。
仲間といたときは理解しあえず孤独、1人になっては寂しさが湧き上がり結局孤独…人間身勝手でどうしようもないなー、何とも切ない気持ちが込み上げます。
主人公ローウェルを演じるのはブルース・ダーン。
ベトナム帰還兵を演じていた「ブラックサンデー」も印象的でしたが、元々壊れやすい繊細な人が1人きりになっていよいよヤバい感じになっていく…今作も少し狂気がかった役がハマってました。
そんなローウェルと行動を共にするようになるのが3体のロボット、デューイ、ヒューイ、ルーイ。
R2-D2の原型らしい短足のヨチヨチ歩きがとっても可愛いドローン。彼らと船を再建しつつ新たな生活を始めようとします。
一緒にお喋りできるわけじゃないけど、ちょっとした仕草から心が伝わってくるようで小さな子供のような何とも言えない愛らしさ。
けれどルーイは任務中に体を吹き飛ばされ、ヒューイも事故に遭ってしまいます。
やがて政府の船がバリー・ホージェ号を発見、ローウェルは人間社会に戻るのかそれとも緑と共に生きる道を選ぶのか…
ラストに主人公がとる行動は釈然としない気もしますが、どこにも帰る場所がない孤独感…「バニシング・ポイント」や「ディアハンター」などジャンルは違うけど本作もベトナム戦争末期のアメリカンニューシネマ特有のものが色濃く出ているように思われました。
最後に1人残ったデューイが主人公の意志を継いで緑を守る姿にはじーん。(壊れかけでもヒューイも一緒に残したって、って思ったけど)
自然にとっては人間はいない方がいいと捉えると物悲しいながらもラストはハッピーエンドなのかもしれません。
植物学者の主人公が太陽光の存在を忘れていたり話や設定はツッコミどころ満載でしたが、ビジュアル面がとにかく魅力的。ガラスのような形状のドームが付属した宇宙船のデザインは「マクロスF」のコロニー思い出しました。
ラスト暗闇に照らされたドームがなんとも美しく清涼感あるフォークソングとともに余韻が残ります。
全然別ジャンルですが最近楳図かずおの「わたしは真悟」を読み直したのもあって、健気なロボットが人間の思いを引き継いで何かを残す姿にうるっとなりました。