どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「迷宮のレンブラント」…天才贋作画家が描いた本物の絵

97年制作、ジョン・バダムの最後の映画監督作。

レンブラントの贋作を手掛けた画家が事件に巻き込まれる…設定だけでワクワクさせられてとても面白かった記憶のある作品です。

天才的な贋作の技術を持つ画家ハリー・ドノヴァン(ジェイソン・パトリック)はある日3人の美術商から55万ドルでレンブラントの贋作を描いて欲しいと依頼を受けます。

レンブラントを描けるのはレンブラントだけだ」…はじめは依頼を断ったハリーでしたが、自分の個展がキャンセルになったことに苛立ち、仕事を引き受けることにします。

早速ヨーロッパに飛び徹底的にリサーチ、「まずは何の絵を描くか」…有名作はかえって足がつくので350年前に行方不明になった説がある未発見の〝盲目の男の肖像〟を描くことに決めます。

絵の素材は何で出来ているか…美術館に忍び込み同年代の作品の表面をこっそり削り化学解析、絵の具や筆に至るまで全てトレース、経年劣化まで完璧に再現してみせます。

↑現代に蘇るレンブラントの光と影…!!

いかにも気難しそうなアウトロータイプの主人公ですが、1人黙々と仕事をこなす職人技には絶句、この贋作制作パートは非常にワクワクさせられます。

 

いざ完成品を納品すると依頼主たちも絶賛、しかし「サインがない」とクレームを受けます。

レンブラントの作品の半分ほどにはサインがないそうで「分かりやすく価値を上げようと思って署名を入れるのは愚か者のすることだ」と一蹴するハリー。

しかし依頼主の1人からは「サインさえしなけりゃお前が描いたってことだもんな」などと嫌味を言われてしまいます。

子供の頃から絵の才能があったハリー、売れない画家だった父親(ロッド・スタイガー)に代わりお金を稼ぐことに必死でした。
そしてあらゆる技法をトレースするうち自分のスタイルの絵が描けなくなってしまいました。

「贋作はもうやめてお前自身の絵を描け」と父から叱咤激励されていましたが父子の気持ちはすれ違い気味だったのでした。

 

さて依頼主の美術商たちは絵画発見の偽装工作を首尾よく進め、ハリーの描いた偽絵を鑑定士たちに見せます。
「マジでレンブラントだ…!!」と見事に騙されていくお偉いさんたち(笑)。

しかしたった1人「これはレンブラントじゃない」と鑑定した女性が登場。彼女はハリーと一夜を共にした謎の美女マレーケ(イレーヌ・ジャコブ)でした。

1人位の異議では問題ないだろうと美術商たちは絵を公開オークションに掛けようとしますが、ハリーは「当初の約束と違う、そうするなら絵は自分で売る」と偽絵を持ち帰ろうとします。

しかしガメつい美術商の1人が仲間の1人を故意に射殺しハリーにその罪を着せて絵を取り戻そうとします。

ハリーは自分の描いた偽絵と唯一真贋を鑑定できたマレーケを連れて警察や追手から逃れます…

 

黒幕が誰がいるミステリ系のストーリーなのかな…と思ってみてると後半は一転して逃走劇に。

公開時に評論家の双葉さんが本作を高評価されていた記憶があるのですが、巻き込まれ型主人公&逃亡劇&男女の言い合いのやり取り…などヒッチコックっぽい作風でオールドファンにも受けがよかったのかもしれません。

後半の主人公の行動が短絡的すぎる気もしますが、ヒロインと惹かれあっていく過程がGOOD。

「いつまで親のせいにしてんのよ」「あなた友達いないし人を好きになったことがないんじゃない?」…主人公のメンタルをゴリゴリ削ってくる横っ面をひっぱたく系ヒロイン(笑)。

結局ハリーは警察に捕まり「お前がレンブラント描いたっていうなら再現してみろよ」と裁判所で絵を描くことになります。

公判直前に父親の死を知ったハリーは「このまま贋作画家でいいのか」と父の掛けてくれた言葉を思い出し筆を途中で置いてしまいます。

有罪は免れないと思った矢先、仲間割れした残り1人の美術商が証言を翻し真犯人が逮捕されてハリーは釈放されます。

結局絵は本物扱いのままプラド美術館へ…

 

事件が全て片付いた後ハリーは独自のスタイルで描いたマレーケの肖像画を持って彼女の下を訪れます。

絵に堂々と自分のサインを入れマレーケと抱き合うハリー。

なんて甘いエンディングなんだ!!(笑)

ベッタベタな感じもしますが、名もなき者だった主人公が自分のアイデンティティーを勝ち取る(原題はIncognito=匿名)、唯一本物を見極めた女性と結ばれるというとってもロマンチックなエンド。

彼女の方はこんな気難しい彼のどこが良かったん??と思わなくもないけど、絵を描く彼を見つめるヒロインの視線がアツい。

なんだかんだ言って絵を描くのが大好きだった主人公の本当の想いが彼女の目に映りそのハートを射止めたのでしょう。

 

サスペンス映画かと思ってみると終わりはロマンス映画!?

細かいところではツッコミどころもあるし、逃走劇パートはジョン・バダムの他の作品と比べるとイマイチ地味ではあります。

が、設定の面白さ、親子関係なども交え偽物と本物を巡った主人公の内面ドラマが上手く構成されており、見応え十分の1本でした。