85年製作、FXマン(特殊効果担当の男性)を主人公にしたサスペンスアクション。
地味だけれど「ミッドナイトクロス」や「ボディダブル」のような映画製作の裏を覗いている気分になれるところが楽しかったりして、設定とアイデアがユニークな作品でした。
特殊効果担当としてハリウッドで成功を収めているロリー・タイラーはある日法務省の役人から奇妙なオファーを受けます。
その内容は、事件の証人として警察に勾留されている元マフィアの身を守るため、彼の偽造殺人を手伝ってほしいというものでした。
「自分の仕事は夢を売ることだ」と一度は依頼を断ったものの、心変わりして申し出を受けたタイラー。
顔やボディを型取りしマスクの内側に血糊をセット。自ら狙撃者の役を演じ偽の暗殺を演出することに成功。
しかしその直後依頼主の役人に殺されかけてしまいます。
さらに空砲で撃ったはずの元マフィアが殺害されたと報道され、タイラーは殺人犯として追われる身になってしまいます…
映画の撮影シーンから始まる冒頭からシャレていて、特殊効果の裏側をみせる「暗殺の仕込み」シーンにワクワク。
主人公の自宅工房にはなんと「サンゲリア」のポスターが…
(左横はフェイドTOブラックでしょうか)
オーストラリア出身のタイラーはとあるスプラッタ映画に関わってから本国で活動できなくなったのだといいます。妙にリアルな設定(笑)。
ガールフレンドが料理を作っているときには切られた白菜をみて「異星人の肉に使えるかな」と呟くなど、特殊効果の人たちの職業病を垣間見たようなシーンが面白いです。
事件の真相は極めてシンプルで、依頼主にハメられたというだけ。
法務省の長官とそのお抱えの部下は裏でフランコと手を組んでおり、国外逃亡を手助けする代わりにスイス銀行にある財産を山分けしようとしていたのでした。
わざわざこんな特殊効果マンを呼びつける必要があったの??と思ってしまいますが、衆人監視の中で死んだと思わせる&偽造殺人をやるからと理由をつけることで警察の護衛を外す時間をつくる…とかなり手の込んだ計画。
替え玉だったというフランコの死体をどこから調達したのか、身元確認が雑すぎて色々粗も気になりますが、往年のヒッチコック映画のように逃亡しながら真相を追う主人公のドラマにはドキドキさせられます。
特殊メイクでホームレスに変装し指名手配もなんのその、煙幕や思わぬアイテムを使ってのカーチェイスなど、芸達者なおじさん主人公がピンチを切り抜けていく様が楽しいです。
一方警察にも事件の不審な点に気付く捜査官が現れます。
太々しく周りから煙たがられることもあるけど捜査の手腕だけは確かなマッカーシー警部補。
(ランボーの保安官ブライアン・デネヒー)
法務省長官の下を訪れると刑事コロンボのように話の矛盾点をすぐに嗅ぎつけ真相に迫ります。
三つ巴で追われて追っかけてを繰り返す中、クライマックスはタイラーが単独で敵のアジトに突撃。
廊下にスクリーンを貼り目を錯覚させ敵同士撃ち合わせる、ワイヤで転ばせる、脈が測れないように偽物の皮膚を貼って死体を装う…などお前はイーサン・ハントか!!という活躍っぷり。
ビビった黒幕の長官は「スイス銀行にある1500万ドルを山分けしよう」と提案しますが、そんなの信じられるか!!ということで因果応報の裁きを受けます。
真相を明るみに出して元の日常に戻るのかと思いきや、なぜか事件が解決しても死んだフリをして警察から身を隠すタイラー。
フランコに変装したタイラーはスイス銀行から金を引き出すことに成功。その傍には微笑むマッカーシー警部補が…
てっきり特殊効果の助手の女性とくっ付くのかと思いきや、まさかのおっさんルートに突入(笑)。
でも2人仲良く脱サラエンド、これはこれで爽快感があってグッド。
みんなの笑顔がフラッシュバックするご機嫌なエンディングも80年代らしくて陽気です。
敵サイドが間抜けばかりで緊張感に欠けたり、途中の捜査で電話越しとかでも主演2人の絡みがもっと欲しかったなーと思ったり、所々惜しく思われます。
血がブシャーと出るような特殊効果をみたかったという思いもありますが、〝芸は身を助く〟の主人公がかっこいい。
主演が若いイケメンじゃなく地味なおじさん2人なのも渋みがあってかえって良かったです。