地雷に違いないと思っていたら、かなり評判がいいらしいので観に行ってきました。
隠されたアイヌの莫大な金塊の行方を追って、善玉悪玉混じっての三つ巴バトル…
原作は読んでいて、漫画の第1巻を読んだときは「続夕陽のガンマンみたいなのが始まった…!!」と頭から一気に引き込まれた作品でした。
二瓶鉄造のエピソードあたりで終わりかなと予想していたら3巻入ってすぐのところで終了、かなり序盤までの内容になっていました。
でもテンポはいいし、話が綺麗にまとまっていて、原作未読の人にも取っ付きやすそう。
金カム序盤からめちゃくちゃ濃かったよなあと思い出されて、全く退屈しない128分になっていました。
脚色もキャストの再現度も素晴らしく大満足だったのですが、1つだけ不満が…
杉元と第七師団(玉井伍長、岡田、野間の3人)が邂逅する場面…野間の勇姿が大幅にカットされていて、うおおー惜しい!!あそこ完璧に再現して欲しかった…!!と思ってしまいました。
この第七師団の3人、登場シーンはごく僅かなものの、強烈なインパクトを読者に与えるキャラクターでありました。
杉元の飛び込んだ穴倉がヒグマの巣穴だと知らず発砲してしまい、凶暴なヒグマの強襲を受ける3人。
死を前にしても全く怯まず立ち向かっていく常軌を逸した胆力…!!これが地獄のような戦場を生き抜いたものたちなのか…
第七師団がいかに強敵か、いかにネジのぶっ飛んだ奴らの集まりであるかが伝わって来る。
敵だろうが悪人だろうが全力で生きる姿をみせる人間には魅せられてしまう、フリードキン映画のような人物描写…この作品の魅力がギュギュっと濃縮されたような、序盤の名場面だったのではないかと思います。
雪山で谷垣と玉井伍長たち4人が登場した瞬間、原作から抜け出てきたような完璧な佇まいにはそっくりー!!とテンション爆上がり。
玉井伍長役の山内圭哉さん、「獣になれない私たち」でパワハラ上司を演じていた人だと後で知りましたが、あまりにも別人でびっくり。
スキーも見事に滑ってくれて、玉井伍長の「もういい、撃とう撃とう」の台詞の自然さにこんな言い方だったのかと感動(笑)。
顔面が引き剥がされるところも再現されていて素晴らしかったのですが、続く野間の勇姿…
穏やかにヒグマに話しかけながら狙いすました1発を頭部に撃つも脳が小さくて命中せず咬まれてしまう…しかしそれでも「かかって来いッ!」と笑いながらヒグマと対決する姿が最高に煌めいていて格好よかったのですが、この大事な場面が大幅にカット。
「爺さんに昔教わった…」の台詞だけは残されていて、「杉元視点」の穴倉からのアングルは映画ならでは。
ホラー的な見せ方はむしろ面白かったですし、グロシーンを考慮したり、シーン全体をみて短くした方が引き締まって良いという判断になったのかもしれず、カットされていても悪いようにはなっていなかったとは思います。
でも役者さんたちが素晴らしかっただけに「落ち着けよ熊公」がみてみたかった…別アングル視点の映像や未公開シーンなどがあればどうにかBlu-ray特典でもいいから是非…という思いが残りました。
全体としては素晴らしい出来。
山﨑賢人の杉元は序盤ちょっと堅い感じがして、杉元はもっと柔らかいイメージ。戦闘のときと普段の様子にもっと激しいギャップがあるイメージだと思いましたが、アシリパさんや白石と絡むと段々良い感じに。
アシリパさんは顔芸の再現が本当に素晴らしかった。
白石は原作より三枚目な印象かと思いきや、漫画にはなかったアクションシーンの立ち回りの動きの表現なども完全に白石。
皆原作から抜け出てきたような人ばかり。クライマックスのアクションでは原作にはない対戦カードが拝めて、これはむしろファンサービスだと楽しませてもらいました。
予告が出た時にもネットで言われていたようですが、全体的に衣装が綺麗すぎるというのはあって、マカロニウエスタンのように臭ってきそうな位汚い方がよかったかも(笑)。
エンドロールのテロップで「この作品は動物を傷つけていません」みたいなのが出てきて姉畑支遁の顔が頭をよぎってしまいましたが(笑)、グロ描写は控えめにしつつご飯のシーンも概ね再現、トリオ結成で終わるところもとても良かったです。
自分は知らずに観に行ったのですが、大ヒット御礼の入場者特典が配られていて、原作者描き下ろしのイラストカードがいただけました。
↑厚手のしっかりした紙に両面印刷…!!
この特典配布があったからなのか、劇場は大きなスクリーンが満席に近い状態で、幅広い客層の人が来ていました。
漫画にしろ小説にしろ、原作の実写化って違う部分を挙げてはついつい批判してしまいたくなることが多く、自分も「野間がー」とどうしても言いたくなってしまったけれど(笑)、予想に反して原作リスペクトな素晴らしい出来栄え。
続きも絶対に観たいと思わせてくれるクオリティの作品でした。