なんてややこしいタイトル。
英題はDeath Rides a Horse。
「夕陽のガンマン」とは全く関係ない作品ですが、リー・ヴァン・クリーフ主演ということで便乗してこんなタイトルに!?
いい加減な邦題に思えますが、リー・ヴァン・クリーフが謎の凄腕ガンマンを演じているところ、音楽がエンニオ・モリコーネ、脚本家も「夕陽のガンマン」を共同で手がけたルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ…とあながち間違ったタイトルではないのかも。
タランティーノがお気に入りマカロニ・ウエスタン第8位に選び「キル・ビル」でオマージュを捧げていた作品としても知られています。
レオーネ作品のような風格はないし、他のマカロニよりケレン味がなくさらっとした印象ですが、復讐物の王道ストーリー、バディものの面白さはあって、十分楽しんで観れる1本になっていました。
◇◇◇
雨の日の夜…突然4人のならず者が一家を襲撃。少年ビルは目の前で家族を皆殺しにされてしまいます。
タトゥー、顔の傷、イヤリング…物陰に隠れながら襲撃者の特徴をしっかり記憶に刻んでいく少年。
冒頭は「キル・ビル」のオーレン石井が両親を殺される場面によく似ていて、しきりに目のアップが強調されるところもユマ・サーマンが復讐相手を思い出すフラッシュバックシーンと似ています。
一味のうち最後に現れた1人は、髑髏のネックレスをしており、燃える家から少年をそっと連れ出し、ビルは一命を取り留めました。
15年後…成長した青年は復讐を誓い凄腕ガンマンに。
ビル役を演じるのは「バーバレラ」のジョン・フィリップ・ロー。端正な顔立ちのイケメンですが、アクの濃い顔の並ぶマカロニの中にいると薄味で物足りないかも…
「憎しみだけで生きてきた」という割には演技があっさりしているような気もします。
ただ個性的な容姿の師匠とは好対照で、百発百中当てていく冒頭のトレーニングシーンはカッコいい…!!
一方、とある刑務所では15年刑期を務めた初老のガンマン・ライアンが出所してきました。
仲間に裏切られ、1人臭い飯を食っていたライアンもまた復讐を誓い、かつての同胞たちの下を訪れます。
同じ敵を追う者同士、巡り合うライアンとビル。
老ガンマンの方がなにかと上手で「怒りの荒野」のガンマン十戒ほどではないけれど、教えを授けていくリー・ヴァン師匠。
学んだ弟子が師匠にやり返すシーンがあったりして脚本がスマートにまとまっています。
「復讐は冷めてからが上手い料理」もキル・ビルの冒頭で出てきた言葉。
怒りに燃えて周りが見えない青年を諭す師匠からは、自分の人生への悔恨の念があるようにもみえてきます。
「お前のような息子が欲しかった」と語るもビルからはグランパ呼びされてしまう渋すぎる師匠(笑)。
フィルモグラフィー的には「続夕陽」のあとなのか、本作のリー・ヴァン・クリーフ、ちょっとお腹が出ていてふっくらしている気もします。
それでも表情といい、身のこなしといい絵になっていて圧倒的存在感…!!完全に若者を食ってしまっています。
敵役もそれぞれ印象に残る顔ぶれですが、「夕陽のガンマン」でインディオの手下を演じていた2人が登場。
レオーネ作品の常連、迫力ある巨体のマリオ・ブレガと、「夕陽〜」でも抜け目ない男を演じていたルイジ・ピスティッリ。
1番の悪玉はピスティッリ演じるウォルコットの方ですが、町の有力者になったズル賢いヒール役が憎たらしくてハマり役。
リー・ヴァン・クリーフがアジトを訪れた際に床下に突然穴が空いて落っこちるシーンはスパイ映画のような設備で笑ってしまいます。
クライマックスはメキシコ人たちを交えて砂嵐舞う中での大バトル…!!
オチはもうオープニングから何となく予想がついてしまうのですが、リー・ヴァン師匠が襲撃者の一味だったことを知るも自分を助けてくれた髑髏のネックレスの男だったことを思い出すビル。
因縁の対決かと思いきや爽やかなラストへ…
バディを組んだ2人が別れゆくラストも「夕陽〜」と似ていなくもないかもしれません。
映画を大いに盛り上げるのはモリコーネの曲。ギターとオリエンタルな笛の音が響くどこか不穏な出だしから猛々しいコーラスが重なり、聴いているこちらの気分も高揚してきます。
素晴らしい名曲で「キル・ビル」の青葉屋突撃のシーンでも使われていました。
リー・ヴァン師匠が好きで昔購入した「リー・ヴァン・クリーフBOX」の中に「復讐のガンマン」「怒りのガンマン」とともに3本立てて入っていた本作。
「復讐のガンマン」がダントツで面白かったですが、こちらも手堅くまとまっていて中々いい作品だったと思います。
師匠的ポジの凄腕ガンマンがハマり役…!!
リー・ヴァン・クリーフの格好良さが堪能できて満足の作品でした。